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東京地方裁判所 平成8年(ワ)1191号 判決

東京都三鷹市中原一丁目一番六号

原告

カミパレス株式会社

右代表者代表取締役

中村驥

右訴訟代理人弁護士

雨宮眞也

小幡葉子

鷹取信哉

板垣眞一

東京都新宿区西新宿一丁目三番三号

榎本ビル五階

被告

巖商事株式会社

右代表者代表取締役

松本巖

右訴訟代理人弁護士

高野長英

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、その経営にかかるカラオケ施設の看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシに、別紙被告標章目録イ、ロ、ニ、ホ及びへ記載の各標章を使用してはならない。

2  被告は、被告本店及び別紙店舗目録一ないし三記載の店舗に存在する看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシから別紙被告標章目録イ及びロ記載の各標章を抹消せよ。

3  被告は、被告本店並びに別紙店舗目録四及び五記載の店舗に存在する看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシから別紙被告標章目録ニ、ホ及びへ記載の各標章を抹消せよ。

4  被告は、原告に対し、二億八六五四万一三六六円及びこれに対する平成一〇年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5  訴訟費用は被告の負担とする。

6  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  商標権に基づく請求

(一) 原告は、次の商標権(以下「原告商標権」といい、その登録商標を「原告登録商標」という。)を有している。

出願年月日 平成四年九月二一日

出願公告年月日 平成六年二月二二日

登録年月日 平成六年一一月三〇日

役務の区分 第四一類

指定役務 カラオケ施設の提供

登録商標 別紙原告登録商標目録記載のとおり

(二)(1) 被告は、被告本店及び別紙店舗目録記載の各店舗において、業としてカラオケ施設の提供を行っている。

(2) 被告は、別紙店舗目録一、二記載の各店舗(以下、これらの店舗を、それぞれ「第一店舗」、「第二店舗」という。)においては、平成六年一二月一日から、別紙店舗目録三記載の店舗(以下、この店舗を「第三店舗」という。)においては、平成七年六月一日から、いずれも業としてカラオケ施設を提供するについて、被告標章目録イ、ロ記載の各標章(以下、それぞれの標章を「被告標章イ」、「被告標章ロ」という。)を付した看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕を設置し、これらの標章を付したチラシ、領収証を配布し、これらの標章を使用している。

(3) 被告は、別紙店舗目録四、五記載の各店舗(以下、これらの店舗を、それぞれ「第四店舗」、「第五店舗」という。)において、平成七年八月一日から平成八年四月三〇日まで、業としてカラオケ施設を提供するについて、被告標章目録ニ、ホ記載の各標章(以下、それぞれの標章を「被告標章ニ」、「被告標章ホ」という。)を付した看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕を設置し、これらの標章を付した「チラシ、領収証を配布し、これらの標章を使用していた。

(4) 被告は、被告本店において、業としてカラオケ施設を提供するについて、被告標章イ、ロ、ニ及びホの各標章を付した看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕を設置し、これらの標章を付したチラシ、領収証を配布し、これらの標章を使用している。

(三) 被告が被告本店及び第一ないし第五店舗において行っているカラオケ施設の提供は、原告商標権の指定役務と同一である。

(四)(1) 原告登録商標の要部は「ドレミファ」という部分である。

(2) 被告標章イの要部は、「ドレミファ」という部分であり、これは、原告登録商標の要部と外観、観念、称呼を同じくするので、被告標章イは、原告登録商標と類似する。

(3) 被告標章ロの要部は、「Doremifa」という部分であり、これは、原告登録商標の要部と観念、称呼を同じくするので、被告標章ロは、原告登録商標と類似する。

(4) 被告標章ニの要部は、「ドレミファ」という部分であり、これは、原告登録商標の要部と外観、観念、称呼を同じくするので、被告標章ニは、原告登録商標と類似する。

(5) 被告標章ホの要部は、「Doremifa」という部分であり、これは、原告登録商標の要部と観念、称呼を同じくするので、被告標章ホは、原告登録商標と類似する。

(五) 以上によれば、被告標章イ、ロ、ニ及びホは、いずれも原告登録商標と類似する標章であり、被告が、前記(二)(2)ないし(4)のとおり、これらの標章を原告商標権の指定役務であるカラオケ施設の提供に使用する行為は、商標法三七条一号により原告商標権を侵害するものとみなされる。

(六) 損害

(1) 売上額

〈1〉 第一店舗の平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までの売上額は、三億九二八八万五五九八円である。

〈2〉 第二店舗の平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までの売上額は、四億七五〇七万〇九六七円である。

〈3〉 第三店舗の平成七年六月一日から平成一〇年二月二八日までの売上額は、三億二一八八万八八八七円である。

〈4〉 第四店舗の平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までの売上額は、一億二九三四万二八八八円である。

〈5〉 第五店舗の平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までの売上額は、一億一三五一万八五〇四円である。

(2) 商標法三八条一項所定の損害額

〈1〉 第一ないし第五店舗の利益率はいずれも売上額の二〇パーセントである。

〈2〉a 第一店舗において平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までに被告が被告標章イ及びロの使用により得た利益の額は、売上額の二〇パーセントに当たる七八五七万七一一九円である。

b 第二店舗において平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までに被告が被告標章イ及びロの使用により得た利益の額は、売上額の二〇パーセントに当たる九五〇一万四一九三円である。

c 第三店舗において平成七年六月一日から平成一〇年二月二八日までに被告が被告標章イ及びロの使用により得た利益の額は、売上額の二〇パーセントに当たる六四三七万七七七七円である。

d 第四店舗において平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までに被告が被告標章ニ及びホの使用により得た利益の額は、売上額の二〇パーセントに当たる二五八六万八五七七円である。

e 第五店舗において平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までに被告が被告標章ニ及びホの使用により得た利益の額は、売上額の二〇パーセントに当たる二二七〇万三七〇〇円である。

右aないしeの合計額は、二億八六五四万一三六六円である。

〈3〉 被告らが原告商標権の侵害行為により受けた利益の額は、原告が受けた損害の額と推定されるから、右二億八六五四万一三六六円が、原告の受けた損害の額と推定される。

(3) 商標法三八条二項所定の使用料相当額

〈1〉 原告登録商標の使用料相当額は売上額の三パーセントである。

〈2〉a 第一店舗の平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までの被告標章イ及びロの使用についての使用料相当額は、売上額の三パーセントに当たる一一七八万六五六七円である。

b 第二店舗の平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までの被告標章イ及びロの使用についての使用料相当額は、売上額の三パーセントに当たる一四二五万二一二九円である。

c 第三店舗の平成七年六月一日から平成一〇年二月二八日までの被告標章イ及びロの使用についての使用料相当額は、売上額の三パーセントに当たる九六五万六六六六円である。

d 第四店舗の平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までの被告標章ニ及びホの使用についての使用料相当額は、売上額の三パーセントに当たる三八八万〇二八六円である。

e 第五店舗の平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までの被告標章ニ及びホの使用についての使用料相当額は、売上額の三パーセントに当たる三四〇万五五五五円である。

右aないしeの合計額は、四二九八万一二〇三円である。

〈3〉 右四二九八万一二〇三円が原告登録商標の使用料相当の損害額である。

2  不正競争防止法二条一項一号に基づく請求

(一) 原告は、そのカラオケの営業に関し、平成三年から、別紙原告標章目録第一ないし第三記載の表示(以下、それぞれ「原告標章一」、「原告標章二」、「原告標章三」という。)を、外壁に大きく掲げ、右標章を付した看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕を広範囲に掲示し、右標章を付したチラシ、割引券を広範囲に配布し、右標章を付した領収書を交付するなどして使用してきた。

原告標章一ないし三は、遅くとも平成六年一二月一日には、原告のカラオケの営業の営業表示として広く認識されていたものであり、現在においても、原告標章一ないし三は、原告のカラオケの営業の営業表示として広く認識されている。

(二)(1) 被告は、前記1(二)(2)、(3)のとおり、第一及び第二店舗においては平成六年一二月一日から、第三店舗においては平成七年六月一日から、カラオケの営業に被告標章イ及びロを使用し、第四及び第五店舗においては、平成七年八月一日から平成八年四月三〇日まで、カラオケの営業に被告標章ニ及びホを使用していた。

(2) 被告は、前記1(二)(4)のとおり、被告本店において、カラオケの営業に被告標章イ、ロ、ニ及びホを使用している。

(3) 被告は、第四及び第五店舗において、平成七年八月一日から平成八年四月三〇日まで、カラオケの営業に被告標章目録へ記載の標章(以下、この標章を「被告標章へ」という。)を付した看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕を設置し、この標章を付したチラシ、領収証を配布し、この標章を使用していた。

(4) 被告は、被告本店において、カラオケの営業に被告標章へを付した看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕を設置し、この標章を付したチラシ、領収証を配布し、この標章を使用している。

(三)(1)〈1〉 原告標章一の要部は「ドレミファ」という部分である。

〈2〉 被告標章イの要部は、「ドレミファ」という部分であり、これは、原告標章一の要部と外観が類似し、観念、称呼を同じくするので、被告標章イは、原告標章一と類似する。

〈3〉 被告標章ニの要部は、「ドレミファ」という部分であり、これは、原告標章一の要部と外観が類似し、観念、称呼を同じくするので、被告標章ニは、原告標章一と類似する。

(2)〈1〉 原告標章二の要部は「Doremifa」という部分である。

〈2〉 被告標章ロの要部は、「Doremifa」という部分であり、これは、原告標章二の要部と外観が類似し、観念、称呼を同じくするので、被告標章ロは、原告標章二と類似する。

〈3〉 被告標章ホの要部は、「Doremifa」という部分であり、これは、原告標章二の要部と外観、観念、称呼を同じくするので、被告標章ホは、原告標章二と類似する。

(3) 被告標章へは、原告標章三と同一である。

(四) 被告は、故意又は過失により、前記2(二)のとおり被告標章イ、ロ、ニ、ホ及びへをカラオケの営業に使用し、被告のカラオケ営業と原告のカラオケ営業との混同を生じさせ、原告の営業上の利益を侵害している。

(五)(1) 被告の第一ないし第五店舗の売上額は、前記1(六)(1)〈1〉ないし〈5〉のとおりである。

(2) 不正競争防止法五条一項所定の損害額

〈1〉a 第一店舗において平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までに被告が被告標章イ及びロの使用により得た利益の額は、前記1(六)(2)〈2〉aのとおり、七八五七万七一一九円である。

b 第二店舗において平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までに被告が被告標章イ及びロの使用により得た利益の額は、前記1(六)(2)〈2〉bのとおり、九五〇一万四一九三円である。

c 第三店舗において平成七年六月百から平成一〇年二月二八日までに被告が被告標章イ及びロの使用により得た利益の額は、前記1(六)(2)〈2〉cのとおり、六四三七万七七七七円である。

d 第四店舗において平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までに被告が被告標章ニ、ホ及びへの使用により得た利益の額は、前記1(六)(2)〈2〉dのとおり二五八六万八五七七円である。

e 第五店舗において平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までに被告が被告標章ニ、ホ及びへの使用により得た利益の額は、前記1(六)(2)〈2〉eのとおり、二二七〇万三七〇〇円である。

右aないしeの合計額は、二億八六五四万一三六六円である。

〈2〉 被告らが不正競争行為により受けた利益の額は、原告が受けた損害の額と推定されるから、右二億八六五四万一三六六円が、原告の受けた損害の額と推定される。

(3)〈1〉 原告標章一ないし三の使用料相当額は売上額の三パーセントである。

〈2〉a 第一店舗の平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までの被告標章イ及びロの使用についての使用料相当額は、前記1(六)(3)〈2〉aのとおり一一七八万六五六七円である。

b 第二店舗の平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までの被告標章イ及びロの使用についての使用料相当額は、前記1(六)(3)〈2〉bのとおり一四二五万二一二九円である。

c 第三店舗の平成七年六月一日から平成一〇年二月二八日までの被告標章イ及びロの使用についての使用料相当額は、前記1(六)(3)〈2〉cのとおり九六五万六六六六円である。

d 第四店舗の平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までの被告標章ニ、ホ及びへの使用についての使用料相当額は、前記1(六)(3)〈2〉dのとおり三八八万〇二八六円である。

e 第五店舗の平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までの被告標章ニ及びホの使用についての使用料相当額は、前記1(六)(3)〈2〉eのとおり三四〇万五五五五円である。

右aないしeの合計額は、四二九八万一二〇三円である。

〈3〉 右四二九八万一二〇三円が原告標章一ないし三の使用料相当の損害額である。

3(一)  よって、原告は、被告に対し、商標法三六条一項に基づき、その経営にかかるカラオケ施設の看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシに、被告標章イ、ロ、ニ及びホを使用することの差止めを求め、同法三六条二項に基づき、被告本店及び第一ないし第三店舗に存在する看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシから被告標章イ及びロを抹消すること、被告本店並びに第四及び第五店舗に存在する看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシから被告標章ニ及びホを抹消することを求める。また、民法七〇九条、商標法三八条一項二項に基づき、損害賠償として二億八六五四万一三六六円(予備的に四二九八万一二〇三円)及びこれに対する不法行為の後である平成一〇年三月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(二)  原告は、被告に対し、不正競争防止法三条一項に基づき、その経営にかかるカラオケ施設の看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシに、被告標章イ、ロ、ニ、ホ及びへを使用することの差止めを求め、同法三条二項に基づき、被告本店及び第一ないし第三店舗に存在する看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシから被告標章イ及びロを抹消すること、被告本店並びに第四及び第五店舗に存在する看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕、領収書、チラシから被告標章ニ、ホ及びへを抹消することを求める。また、不正競争防止法四条、五条一項二項に基づき、損害賠償として二億八六五四万一三六六円(予備的に四二九八万一二〇三円)及びこれに対する不正競争行為の後である平成一〇年三月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(三)  なお、右(一)の請求と右(二)の請求が重なる部分は、選択的に請求するものである。

二  請求原因に対する認否

1(一)  請求原因1(一)の事実は認める。

(二)(1)  同1(二)(1)の事実のうち、被告が、第一ないし第五店舗において、業としてカラオケ施設の提供を行っていることは認め、その余は否認する。

(2)  同1(二)(2)、(3)の事実は認める。

(3)  同1(二)(4)の事実は否認する。

(三)  同1(三)の事実のうち、被告が第一ないし第五店舗において行っているカラオケ施設の提供が、原告商標権の指定役務と同一であることは認め、その余は否認する。

(四)  同1(四)(1)ないし(5)の主張は争う。

(五)  同1(五)の主張は争う。

(六)(1)  同1(六)(1)〈1〉ないし〈5〉の事実は認める。

(2)  同1(六)(2)〈1〉及び〈2〉の事実は否認し、〈3〉の主張は争う。

〈1〉 第一店舗について、平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までの経常損益から消費税、本部経費等を差し引いた損益は、五四一四万三四〇八円の損失であり、利益はない。

〈2〉 第二店舗について、平成六年一二月一日から平成一〇年二月二八日までの経常損益から消費税、本部経費等を差し引いた損益は、四二一〇万四九〇九円の損失であり、利益はない。

〈3〉 第三店舗について、平成七年六月一日から平成一〇年二月二八日までの経常損益から消費税、本部経費等を差し引いた損益は、三四四〇万五〇七二円の損失であり、利益はない。

〈4〉 第四店舗について、平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までの経常損益から消費税、本部経費等を差し引いた損益は、一三五七万一五八五円の損失であり、利益はない。

〈5〉 第五店舗について、平成七年八月一日から平成八年四月三〇日までの経常損益から消費税、本部経費等を差し引いた損益は、二三八万四〇四九円の損失であり、利益はない。

(3)  同1(六)(3)〈1〉及び〈2〉の事実は否認し、〈3〉の主張は争う。

2(一)  請求原因2(一)の事実は否認する。

(二)(1)  同2(二)(1)の事実は認める。

(2)  同2(二)(2)の事実は否認する。

(3)  同2(二)(3)の事実は認める。

(4)  同2(二)(4)の事実は否認する。

(三)(1)  同2(三)(1)〈1〉ないし〈3〉の主張は争う。

(2)  同2(三)(2)〈1〉ないし〈3〉の主張は争う。

(3)  同2(三)(3)の主張は認める。

(四)  同2(四)の事実は否認する。

(五)(1)  同2(五)(1)の事実は認める。

(2)  同2(五)(2)〈1〉の事実は否認し、〈2〉の主張は争う。

請求原因に対する認否1(六)(2)〈1〉ないし〈5〉のとおり、被告に利益はない。

(3)  請求原因2(五)(3)〈1〉及び〈2〉の事実は否認し、〈3〉の主張は争う。

3  請求原因3(一)ないし(三)の主張は争う。

4  需用者がカラオケ店を選択する基準は、商標等によるものではなく、料金の安さ、自宅からの距離の近さ、楽曲の豊富さによる。

また、原告の店舗がビルの一部分を借りているものであるのに対し、被告の店舗はビル全部をカラオケとしていること、そのため、一店舗の面積は原告の店舗よりも被告の店舗の方が大きいこと、原告の店舗が、通信カラオケは二社のものを、レーザーデイスクは一社のものを入れているのに過ぎないのに対し、被告の店舗は、全社の通信カラオケ及びレーザーディスクを入れていることから、被告の店舗の集客力は原告の店舗に比べて大きい。

したがって、被告は、被告標章イ、ロ、ニ、ホ及びへの使用によって利益を得ているものではなく、被告の得た利益の全額が被告の右標章の使用と因果関係があるわけではない。

三  抗弁

1  第四及び第五店舗における被告標章ニ、ホ及びへの使用許諾契約

(一) 被告は、原告の関連会社である福一産業株式会社との間で、平成四年八月七日、第四店舗について、福一産業株式会社を請負人及び売主として、カラオケの内装工事の請負契約及びカラオケ機器の販売契約(以下、これらをまとめて「請負等契約」という。)を締結した。右契約の締結と同時に、被告は、原告との間で、原告は、被告が第四店舗において被告標章ニ、ホ及びへをカラオケ営業に使用することを許諾し、右標章の使用許諾の対価は、請負等契約の代金に含まれるという内容の被告標章ニ、ホ及びへの使用許諾契約を締結した。被告は、福一産業株式会社に対して、請負等契約の代金を全額支払済みであり、その中に含まれる右標章の使用許諾の対価も全額支払済みである。

被告は、平成五年三月一日、第五店舗について、第四店舗についてと同様に、福一産業株式会社との間で請負等契約を締結し、原告との間で、被告標章ニ、ホ及びへの使用許諾契約を締結し、被告は、請負等契約の代金を全額支払済みであり、その中に含まれる右標章の使用許諾の対価も全額支払済みである。

(二) 被告による第四及び第五店舗における被告標章ニ、ホ及びへの使用は、右各使用許諾契約に基づくものであるから、これが原告商標権の侵害や不正競争になることはない。

2  被告標章イについての商標権の行使

(一) 被告の関連会社である株式会社松本経営システムは、次の商標権(以下「被告商標権」という。)を有している。

出願年月日 平成六年一月一八日

出願公告年月日 平成九年四月二三日

登録年月日 平成九年一一月一四日

役務の区分 第四一類

指定役務 娯楽施設の提供

登録商標 別紙被告登録商標目録記載のとおり

(二) 被告は、平成九年一一月一四日、株式会社松本経営システムから、被告商標権につき通常使用権の設定を受けた。

(三) したがって、平成九年一一月一四日より後における被告標章イの使用は、右通常使用権の行使である。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1(一)の事実は認め、(二)の主張は争う。

2  同2(一)、(二)の事実は不知であり、(三)の主張は争う。

五  再抗弁(抗弁1に対して)

1  被告は、平成六年一二月一日から、第一及び第二店舗において、カラオケの営業に、被告標章イ及びロを使用し、平成七年六月一日から、第三店舗において、カラオケの営業に、被告標章イ及びロを使用した。

2  抗弁1(一)の第四及び第五店舗についての被告標章ニ、ホ及びへの使用許諾契約は、被告が第四及び第五店舗以外の店舗において原告標章一ないし三に類似する標章を使用しないことを被告の債務の内容としていた。しかし、被告標章イは、原告標章一に類似し、被告標章ロは、原告標章二に類似するから、右1の被告標章イ及びロの使用は、右使用許諾契約に基づく債務の不履行に当たる。

原告は、被告に対し、第一ないし第三店舗において被告標章イ及びロの使用を中止するように再三申し入れたが、被告はこれに応じなかった。

3  原告は、被告に対し、平成七年七月一一日、右2の債務不履行を理由に第四及び第五店舗についての被告標章ニ、ホ及びへの使用許諾契約を解除する旨の意思表示をした

六  再抗弁に対する認否

1  再抗弁1の事実は認める。

2  同2のうち、被告が第一ないし第三店舗における被告標章イ及びロの使用を中止しなかったことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。

3  同3の事実は認める。

理由

一1(一) 請求原因1(一)の事実は、当事者間に争いがない。

(二)(1) 同1(二)(1)の事実のうち、被告が、第一ないし第五店舗において、業としてカラオケ施設の提供を行っていることは、当事者間に争いがない。

被告が、被告本店において、業としてカラオケ施設の提供を行っていることを認めるに足りる証拠はない。

(2) 同1(二)(2)、(3)の事実は、当事者間に争いがない。

(3) 同1(二)(4)の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三) 同1(三)の事実のうち、被告が第一ないし第五店舗において行っているカラオケ施設の提供が、原告商標権の指定役務と同一であることは、当事者間に争いがない。

右(二)(1)のとおり、被告が、被告本店において、業としてカラオケ施設の提供を行っていることを認めるに足りる証拠はない。

2(一) 原告登録商標の構成について検討する。

(1)  原告登録商標は、「ドレミファクラブ」という片仮名の文字を、ほぼ同一の大きさ、同一の書体、同一間隔によって横書きしたものである(「ア」の文字は、他の文字よりも小さいが、他の文字との大小関係は、「ふあ」を表記する場合に通常記載されるべき程度の関係にあるということができるから、他の文字より特に小さいということはない。)。したがって、原告登録商標を構成する「ドレミファ」という部分とその余の「クラブ」という部分の間には、その書体、文字の大きさ、配置からみて、外観上、主従、軽重の関係は認められず、全体が一連のものと認められる。

(2)  「ドレミファクラブ」という一連の普通名詞は存在せず、原告登録商標は、「ドレミファ」という語と「クラブ」という語を連続させて作り出されたものと認められる。

このうち、「ドレミファ」という語は、もともと、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シという七音階の最初の四音階の名称から成り立っている語であり、国語辞典では「音階のこと。特に、七音階(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)をさす。」との説明が付されている(「広辞苑」(第四版)一八八三頁)から、「ドレミファ」という語は、音階を意味する普通名詞であるということができる。他方、「クラブ」という語は、国語辞典では、「政治・社交・文芸・娯楽その他共通の目的によって集った人々の団体。また、その集合所。」との説明が付されており(「広辞苑」(第四版)七五七頁)、もともとは英語であるが、今日では右のような意味の日本語の普通名詞となっているということができる。そして、以上のような意味を有する「ドレミファ」と「クラブ」を結合させたからといって、そりことによって特定の観念を生じるとは認められない。また、一般人が「ドレミファクラブ」という語に接した場合、これが「ドレミファ」と「クラブ」を結合させたものであることからすると、「ドレミファ」と「クラブ」に分けて考えることがないとはいえないが、それが通常であるとまでは認められないし、「ドレミファ」と「クラブ」がそれぞれ右のような意味を有する普通名詞であることからすると、「ドレミファ」の部分が特に注意を引くとも認められない。

(3)  称呼についてみると、原告登録商標は、「どれみふあくらぶ」という称呼を生じるものと認められるが、これを一連に称呼しても、七音しかなく、自然に「どれみふあくらぶ」と称呼することができ、特に冗長という感じを与えるものではないから、「くらぶ」を省略して「どれみふあ」とのみ発音するのが通常であるとはいえない。

(4)  右(1)ないし(3)を総合すると、原告登録商標は、特定の観念のない造語であって、「ドレミファクラブ」という一連の語の全体が自他の役務の識別機能を果たしていると認めるのが相当であり、原告登録商標において自他の役務の識別機能を果たす部分が「ドレミファ」の部分のみであるとすることはできない。

(二) 次に、被告標章イと原告登録商標の類否について検討する。

(1)〈1〉  被告標章イは、右上がりに若干傾斜した黒色の横長の楕円の中に「mks」という文字を白抜きにした楕円の図形(以下「楕円部分」という。)を左端に配し、その右に、「ドレミファ館」という文字を、ほぼ同一の大きさ、同一の書体、同一間隔によって一連に横書きしたものである。

〈2〉  ところで、楕円部分は、被告標章イの左端に位置し、被告標章全体の四分の一程度の大きさを占めるにとどまっている上、その中に白抜きされた「mks」という文字は、アルファベットであり、特に何らかの意味を認識させるものではないから、被告標章イにおいては、「ドレミファ館」という文字の部分が楕円部分よりも強く認識されることがあり得ると認められる。

(2)  被告標章イは、原告登録商標と比較すると、「ドレミファ」という部分は共通しているが、その他の楕円部分及び「館」の部分が異なるから、原告登録商標とは外観において異なる。

被告標章イは、「えむけいえすどれみふぁかん」又は「どれみふぁかん」という称呼を生じるから、原告登録商標とは称呼においても異なる。

(3)  したがって、被告標章イは、原告登録商標と類似しないものと認められる。右(1)〈2〉のとおり、被告標章イにおいて、「ドレミファ館」という文字の部分が楕円部分よりも強く認識されることがあり得るとしても、被告標章イは、「ドレミファ館」という文字の部分についても原告登録商標とは異なるから、右(1)〈2〉の事実は、被告標章イと原告登録商標が類似しない旨の右認定を覆すに足りるものではない。

(三) 被告標章ロと原告登録商標の類否について検討する。

(1)〈1〉  被告標章ロは、楕円部分が左端にあり、その右に、「Doremifalkan」というアルファベットを独特の書体で記載し、このうち「Do」の文字と重ねて、頂上の折れた略三角形の帽子をかぶり左手にマイクを持ったピエロ風の人物の図形を配し、その人物の上に半円形の星の列を描いたものである。

〈2〉  前記(二)(1)〈2〉と同様に、被告標章ロは、楕円部分よりもそれ以外の部分がより強く認識されることがあり得ると認められる。

(2)  被告標章ロは、外観において、原告登録商標と明らかに異なる。

被告標章ロは、「えむけいえすどれみふぁかん」又は、「どれみふぁかん」という称呼を生じるから、原告登録商標とは称呼においても異なる。

(3)  したがって、被告標章ロは、原告登録商標と類似しないものと認められる。右(1)〈2〉のとおり、被告標章ロにおいて、楕円部分よりもそれ以外の部分がより強く認識されることがあり得るとしても、被告標章ロは、楕円部分以外の部分についても原告登録商標とは異なるから、右(1)〈2〉の事実は、被告標章ロと原告登録商標が類似しない旨の右認定を覆すに足りるものではない。

(四) 被告標章ニと原告登録商標の類否について検討する。

(1)〈1〉  被告標章ニは、楕円部分が左端にあり、その右に、原告登録商標と同じ表示が存するものである。

〈2〉  前記(二)(1)〈2〉と同様に、被告標章ニは、楕円部分よりもそれ以外の部分がより強く認識されることがあり得ると認められる。

(2)  被告標章ニは、楕円部分以外の部分は、原告登録商標と同一であり、右(1)〈2〉の事実をも考慮すると、被告標章ニは、原告登録商標と外観において類似する。

被告標章ニは、「えむけいえすどれみふぁくらぶ」又は「どれみふぁくらぶ」という称呼を生じるから、原告登録商標とは称呼において同一又は類似する。

(3)  したがって、被告標章ニは、原告登録商標と類似するものと認めらる。

(五) 被告標章ホと原告登録商標の類否について検討する。

(1)〈1〉  被告標章ホは、楕円部分が左端にあり、その右に、「Doremifa Club」というアルファベットを記載したものである。

〈2〉  前記(二)(1)〈2〉と同様に、被告標章ホは、楕円部分よりもそれ以外の部分がより強く認識されることがあり得ると認められる。

(2)  被告標章ホは、原告登録商標とは外観において異なる。

しかし、被告標章ホのうち「Doremifa」という部分は、「ドレミファ」のローマ字表記であり、「Club」という部分は、日本人の英語に関する知識からすれば、「クラブ」を表す英単語であって「くらぶ」と発音することが容易に認識されるから、「Doremifa Club」という部分は、「どれみふぁくらぶ」という称呼を生じる。そうすると、被告標章ホは、「えむけいえすどれみふぁくらぶ」又は「どれみふぁくらぶ」という称呼を生じ、原告登録商標とは称呼において同一又は類似するものと認められる。

(3)  したがって、被告標章ホは、原告登録商標と類似するものと認められる。

3 次に、不正競争防止法二条一項一号に基づく請求について検討する。

(一)(1) 甲第一号証、第七ないし第一七号証の各一ないし四、第一八号証の一ないし六、第一九及び第二〇号証の各一ないし四、第二一号証の一ないし八、第二二号証の一ないし五、第二三号証の一ないし六、第二四号証の一ないし一〇、第二五号証の一ないし四、第二六号証の一ないし六、第二七号証の一ないし八、第二八及び第二九号証の各一ないし四、第三〇号証の一ないし七、第三一号証の一ないし四、第三二号証の一ないし六、第三三及び第三四号証の各一ないし四、第三五号証の一ないし八、第三六ないし第三八号証の各一ないし四、第三九号証の一ないし八、第四〇号証の一ないし四、第四一号証の一ないし六、第四二号証の一ないし四、第四三ないし第四七号証、第四八号証の一ないし六、第四九ないし第一〇〇号証、第一〇一号証の一ないし三、第一〇二号証の一、二、第一〇三ないし第二〇〇号証及び弁論の全趣旨によると、原告は、平成二年ころからドレミファクラブの名称でカラオケ店の経営を始め、その経営に係るカラオケ店を増やすとともに、他の者が経営するカラオケ店にもドレミファクラブ〇〇店という名称の使用を許諾してきたこと、原告の経営に係るカラオケ店及び原告が名称の使用を許諾したカラオケ店においては、原告標章一ないし三のうち一又は複数の標章を外壁に大きく掲げるとともに、右標章を付した看板、ポスター、掲示板、旗、のぼり、たれ幕を掲示し、右標章を付したチラシ、割引券を配布し、右標章を付した領収書を交付するなどしてきたこと、原告は、その経営に係るカラオケ店及び名称の使用を許諾したカラオケ店以外の場所においても、原告標章一ないし三のうち一又は複数の標章を付した看板、ポスターを掲示し、右標章の付された宣伝用自動車を走らせ、右標章の付されたチラシ、割引券を配布するなどしてきたこと、原告が経営し又は原告が名称の使用を許諾したドレミファクラブという名称のカラオケ店は、関東地方を中心に次第に増加し、平成六年一二月一日には東京都内に二八店舗、千葉県内に九店舗、神奈川県内に八店舗、埼玉県内に一四店舗、山梨県内に四店舗、群馬県内に一店舗の合計六四店舗が存在し、平成七年六月一日には東京都内に三二店舗、千葉県内に一三店舗、神奈川県内に九店舗、埼玉県内に一五店舗、山梨県内に四店舗、群馬県内に二店舗、栃木県内に一店舗の合計七六店舗が存在し、同年八月一日には、東京都内に三三店舗、千葉県内に一四店舗、神奈川県内に一〇店舗、埼玉県内に一五店舗、山梨県内に四店舗、群馬県内に三店舗、栃木県内に一店舗の合計八〇店舗が存在し、現在は、合計一一六店舗存在し、東京二三区内だけでも二七店舗存在していること、原告によるカラオケ事業は、新聞や雑誌の記事に取り上げられてきたこと、原告は、ドレミファクラブという名称でカラオケ店を経営する者を募集する広告やカラオケ店「ドレミファクラブ」のイベントの広告を新聞や雑誌に掲載してきたこと、原告は、平成六年七月ころから、カラオケルーム「ドレミファクラブ」のラジオによる宣伝を行い、平成八年四月ころからは、テレビによる宣伝を行ってきたこと、以上の各事実が認められる。

(2)  右認定事実によれば、原告標章一ないし三は、東京都内においては、遅くとも平成六年一二月一日には、原告又は原告を中心とした企業グループのカラオケの営業を表示するものとして広く認識されており、現在においても、そのようなものとして広く認識されているものと認められる。

(二)(1) 請求原因2(二)(1)の事実は、当事者間に争いがない。

(2)  同2(二)(2)の事実を認めるに足りる証拠はない。

(3)  同2(二)(3)の事実は、当事者間に争いがない。

(4)  同2(二)(4)の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三)(1) 被告標章イと原告標章一の類否について検討する。

〈1〉  被告標章イは、前記2(二)(1)〈1〉、〈2〉のとおりであり、原告標章一は、原告登録商標とは書体を若干異にするものの、「ドレミファクラブ」という片仮名を横書きにしたものであり、「どれみふぁくらぶ」の称呼を生じる。

〈2〉  被告標章イは、原告標章一と比較すると、「ドレミファ」という部分のみをみれば、外観において類似しているが、その他の楕円部分及び「館」の部分が異なるから、被告標章イは、原告標章一とは外観において異なる。

被告標章イは、前記2(二)(2)のとおり、「えむけいえすどれみふぁかん」又は「どれみふぁかん」という称呼を生じるから、原告標章一とは称呼においても異なる。

〈3〉  したがって、被告標章イは、原告標章一と類似しないものと認められる。前記2(二)(1)〈2〉のとおり、被告標章イにおいて、「ドレミファ館」という文字の部分が楕円部分よりも強く認識されることがあり得るとしても、被告標章イは、「ドレミファ館」という文字の部分についても原告標章一とは異なるから、右2(二)(1)〈2〉の事実は、被告標章イと原告標章一が類似しない旨の右認定を覆すに足りるものではない。

(2) 被告標章ニと原告標章一の類否について検討する。

〈1〉  被告標章ニは、前記2(四)(1)〈1〉、〈2〉のとおりであり、原告標章一は、右(1)〈1〉のとおりである。

〈2〉  被告標章ニの楕円部分以外の部分は、原告標章一と書体が若干異なるが、「ドレミファクラブ」という片仮名を横書きにしており、原告標章一と外観が極めてよく似ているから、被告標章ニと原告標章一は、外観において類似する。

被告標章ニは、前記2(四)(2)のとおり、「えむけいえすどれみふぁくらぶ」又は「どれみふぁくらぶ」という称呼を生じるから、原告標章一とは称呼において同一又は類似する。

〈3〉  したがって、被告標章ニは、原告標章一と類似するものと認められる。

(3)  被告標章ロと原告標章二の類否について検討する。

〈1〉  被告標章ロは、前記2(三)(1)〈1〉、〈2〉のとおりであり、原告標章二は、「Doremifa Club」というアルファベットを横書きにしたものであり、「どれみふぁくらぶ」の称呼を生じる。

〈2〉  被告標章ロと原告標章二は、外観において明らかに異なる。

被告標章ロは、前記2(三)(2)のとおり、「えむけいえすどれみふぁかん」又は「どれみふぁかん」という称呼を生じるから、原告標章二とは、称呼において異なる。

〈3〉  したがって、被告標章ロと原告標章二は、類似しないものと認められる。前記2(三)(1)〈2〉のとおり、被告標章ロにおいて、楕円部分以外の部分が楕円部分よりも強く認識されることがあり得るとしても、被告標章ロは、楕円部分以外の部分についても原告標章二とは異なるから、右2(三)(1)〈2〉の事実は、被告標章ロと原告標章二が類似しない旨の右認定を覆すに足りるものではない。

(4)  被告標章ホと原告標章二の類否について検討する。

〈1〉  被告標章ホは、前記2(五)(1)〈1〉、〈2〉のとおりであり、原告標章二は、右(3)〈1〉のとおりである。

〈2〉  被告標章ホの楕円部分以外の部分は、原告標章二と同一であるから、被告標章ホは、原告標章二と外観において類似する。

被告標章ホは、前記2(五)(2)のとおり、「えむけいえすどれみふぁくらぶ」又は「どれみふぁくらぶ」という称呼を生じるから、原告標章二とは称呼において同一又は類似する。

〈3〉  したがって、被告標章ホは、原告標章二と類似するものと認められる。

(5)  請求原因2(三)(3)(被告標章へが原告標章三と同一であること)は、当事者間に争いがない。

二 以上によると、被告標章イは、原告登録商標及び原告標章一のいずれとも類似せず(前記一2(二)、一3(三)(1))、被告標章ロは、原告登録商標及び原告標章二のいずれとも類似しないから(前記一2(三)、一3(三)(3))、第一ないし第三店舗における被告標章イ及びロの使用は、いずれも原告商標権を侵害せず、不正競争にも当たらない。

三1 被告標章のうち、被告標章ニは、原告登録商標及び原告標章一に類似し(前記一2(四)、一3(三)(2))、被告標章ホは、原告登録商標及び原告標章二に類似し(前記一2(五)、一3(三)(4))、被告標章へは、原告標章三と同一である。

そこで、抗弁1(第四及び第五店舗における被告標章ニ、ホ及びへの使用許諾契約)及び再抗弁について検討する。

2 抗弁1(一)の事実は、当事者間に争いがない。

3(一) 再抗弁1、3の事実は、当事者間に争いがない。

(二) 同2は、被告標章イが原告標章一に類似し、被告標章ロが原告標章二に類似することを前提とし、被告が原告標章一ないし三に類似する標章を使用したことが債務不履行に当たるとする主張である。

しかし、前記一3(三)(1)のとおり、被告標章イは原告標章一と類似せず、前記一3(三)(3)のとおり、被告標章ロは原告標章二と類似しないから、被告が原告標章一ないし三に類似する標章を使用したという事実はなく、再抗弁2の主張は、その前提を欠き、採用することができず、再抗弁3の解除は有効と認めることはできない。

4 そうすると、抗弁1(一)の第四及び第五店舗における被告標章ニ、ホ及びへの使用許諾契約は解除されておらず、有効に存続しているものと認められる。

したがって、第四及び第五店舗における被告標章ニ、ホ及びへの使用は、右使用許諾契約に基づくものであり、原告商標権を侵害せず、不正競争にも当たらない。

四 よって、その余の点につき判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 中平健)

原告標章目録

〈省略〉

原告登録商標目録

〈省略〉

被告登録商標目録

〈省略〉

被告標章目録

〈省略〉

店舗目録

一 中央区日本橋大伝馬町一番一〇号 mksドレミファ館日本橋小伝馬町店

二 千代田区神田小川町三丁目九番四号 mksドレミファ館神田小川町店

三 新宿区馬場下町六一番四号 mksドレミファ館早稲田店

四 墨田区江東橋四丁目三〇番一号 mksドレミファクラブ錦糸町店

五 中央区八丁堀四丁目九番九号 mksドレミファクラブ八丁堀店

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